嚥下体操と口腔体操の違い、誤嚥予防で選ぶ種目と順番
公開 2026-10-20|作業療法士・トロル
この記事でわかること
- 嚥下体操は「口・舌」「喉の筋トレ」「首・呼吸・声」の3段。口腔体操はその1段目です
- 喉の筋トレは座ってできる嚥下おでこ体操から。シャキア訓練は仰臥位で個別に行うものです
- 頸椎症や高血圧のある方は医師に確認し、むせや痛みが出たら中止。嚥下障害がある方は専門職の方針が先です
「嚥下体操」と「口腔体操」は、現場では同じ意味で使われがちです。 ところが素材を並べてみると、嚥下体操のほうがひと回り大きいことが分かります。
口腔体操は口と舌の体操です。 嚥下体操はそれに加えて、喉の筋トレと、首・呼吸・声まで含みます。 この違いが分かると、誤嚥予防で何を足せばよいかが決めやすくなります。
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口腔体操は、嚥下体操の1段目です
日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「訓練法のまとめ(2014版)」では、嚥下体操は摂食前の準備体操や基礎訓練と位置づけられています。[1] 全身や首の嚥下筋をほぐし、覚醒を促すことが目的です。
よく知られた形は10の動きを1セットにします。 口すぼめ深呼吸、首の回旋、肩の上下、両手を頭上で組んで体幹の側屈、頬の膨らませまでが前半です。 後半は舌の出し入れ、舌で口角にさわる、強く息を吸い込む、パ・タ・カの発音、そして口すぼめ深呼吸で締めます。[1]
この10個のうち、口腔体操に当たるのは頬・舌・発音の3つです。 残りは首と呼吸と声で、口腔体操だけを回していると、ここが抜けます。
同じ資料には「藤島式嚥下体操セット」もあります。 この嚥下体操に、嚥下おでこ体操または頭部挙上訓練、ペットボトルブローイング、呼吸法、発声訓練を足した形です。[1] つまり嚥下体操の全体像は、口・舌、喉の筋トレ、首・呼吸・声の3段と考えると整理しやすくなります。
口腔体操の5分の流れは、別の記事で扱っています
喉の筋トレは、座ってできるものから選びます
2段目は、のどを引き上げる筋肉(舌骨上筋群)の筋力をつける段です。 飲み込むときに喉頭が前上方へ動き、食道の入り口が開く。その動きを支える筋肉です。[1]
代表はシャキア訓練(頭部挙上訓練)ですが、仰臥位で頭だけを上げ続ける負荷の大きい訓練です。 同じ資料には、円背の高齢者は臥位がとれず、横になる手間で実施率も下がる、という経験から、 座ったままできる嚥下おでこ体操が考案された経緯が書かれています。[1]
| 種目 | 姿勢 | 資料に書かれている方法 | 向かない人・注意 |
|---|---|---|---|
| 嚥下おでこ体操 | 座位 | 額に手を当てて抵抗を加え、おへそをのぞき込むように強く下を向く。ゆっくり5つ数える持続法と、1から5まで数えながら力を入れる反復法。即時効果があるので食前に | 負荷が大きい方は強度・頻度を調節。頸椎症や高血圧の方は注意 |
| 口を開けて保つ(開口訓練) | 座位でも臥位でも | 最大限に口を開け、あごの下の筋肉が強く縮んでいることを意識して10秒保持、10秒休憩。5回で1セット、1日2セット | 顎関節症や顎関節脱臼のある方は注意するか、適用を控える |
| シャキア訓練(頭部挙上訓練) | 仰臥位 | 肩を床につけたまま頭だけを上げ、つま先が見えるまで保つ。原法は1分保持と1分休憩を3回、上げ下げ30回。日本では負荷が大きすぎるため、本人の最大持続時間の50%から始める方法が提案されている | 血圧や脈拍の変動を確かめながら負荷を決める。頸椎症や高血圧の方は注意。集団向きではない |
素材のほうは、嚥下おでこ体操が5秒×5回、口を開けて保つ運動が10秒×3セットを目安にしています。 シャキア訓練の素材は30秒×2セットの例で、秒数と回数は本人に合わせて減らす前提です。
- まず座位の2つ:嚥下おでこ体操と、口を開けて保つ運動。食前の流れに入れられます
- シャキア訓練は個別で:横になれる場所と、血圧・脈拍を見られる体制があるときに
- あごの下を触る:嚥下おでこ体操は、あごの下に指を当てると筋肉が縮むのが分かります。ねらった筋肉に力が入っている目印です[1]
首・呼吸・声は、口腔体操だけでは抜けます
3段目は、首の緊張をとる、息を止めて吐く、大きな声を出す、の3つです。 嚥下体操の10の動きでは、最初と最後の深呼吸、首の回旋、肩の上下、息を吸い込む動きがここに当たります。[1]
健康長寿ネットが紹介している順番も同じ形です。 腹式の深呼吸から始めて、首を回す、首を左右に倒す、肩の上げ下げ、背伸びの順に進みます。 頬と舌のあとに、のどに息が当たるように強く吸って止めて3つ数えて吐き、発声、深呼吸で締める流れです。[2]
首の動きには注意点があります。 頸椎症など首の疾患がある場合は首の回旋運動を控える、めまいなどの症状に注意する、と資料に書かれています。[1] 集団でやるときは、首だけ省く方がいてよい、と最初に伝えておくと安全です。
嚥下障害がある方は、体操の前に専門職の方針を確かめます
順番の例と、確認する目安
3段をつなげると、次のような5分前後の流れになります。 口・舌の段を短くして喉の筋トレを残す、首だけ省く、といった調整は、その日の人数と反応で決めます。
- 1深呼吸で整える(口すぼめ、または腹式)
- 2首の前後・左右・回旋と、肩の上げ下げ(首の疾患がある方は回旋を省く)
- 3口・舌:イー・ウー、頬の膨らませ、舌の突出と左右
- 4発声:パタカラを各10回。はっきり大きな声で
- 5喉の筋トレ:嚥下おでこ体操を5秒×5回。あごの下に力が入っているか触って確かめる
- 6深呼吸で締める
説明に使うイラストは嚥下体操・口腔体操のカテゴリにまとめてあります。この記事で出てきたものは、下に並べておきました。
参考資料
- 1日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会「訓練法のまとめ(2014版)」日摂食嚥下リハ会誌 18(1):55–89, 2014:嚥下体操の10の動きと注意点、開口訓練、頭部挙上訓練と嚥下おでこ体操の方法・注意、藤島式嚥下体操セット。
- 2健康長寿ネット「嚥下障害のリハビリテーション:基礎訓練」(公益財団法人長寿科学振興財団・2023年8月16日更新):基礎訓練の目的と、嚥下体操の10段階の順番。
参照確認日:2026年10月20日。
おわりに
口腔体操を続けているのに「嚥下体操もやったほうがいい」と言われて戸惑う場面があります。 足りないのは種目の数ではなく、喉の筋トレと、首・呼吸・声の2段です。
口・舌の体操に、座ってできるおでこ体操と深呼吸を足す。 それだけで、嚥下体操と呼べる形になるはずです。
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この記事は、嚥下体操と口腔体操の違いと種目の選び方を一般的に整理したものです。嚥下障害がある方の訓練は、医師・歯科医師・言語聴覚士など担当する専門職の評価と方針を優先してください。個別の適応や回数は、本人の状態に合わせて担当者が判断します。











