入所前後訪問指導加算、算定の流れと記録の残し方
公開 2026-08-12|作業療法士・トロル
この記事でわかること
- 訪問できるのは「入所予定日の前30日以内」か「入所後7日以内」。ここを外すと算定できません
- (Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは、生活機能の具体的な改善目標と退所後の支援計画まで作るかどうかです
- 記録は「日付・訪問・計画」の3点セットでそろえると、自己点検がしやすくなります
老健(介護老人保健施設)で働いていると、入所前後訪問指導加算の話は必ず出てきます。 ただ、この加算でつまずくのは要件の中身ではありません。ほとんどが訪問の時期です。
僕も算定の相談を受けたときは、まず「訪問日はいつでしたか」と聞くようにしています。 ここが外れていると、そのあとの計画をどれだけ丁寧に作っても算定できないからです。
入所前後訪問指導加算は、退所後の生活を先に見に行く加算です
この加算は、入所する方が退所後に生活する居宅を実際に訪問したときに算定します。 訪問して、退所を目的とした施設サービス計画(入所中のケアの計画書)の策定と、診療方針の決定まで行うことが条件です。
名前のとおり、見に行く先は施設の中ではなく生活の場です。 手すりの位置、上がりかまちの高さ、家族が実際にできる介助の量。 このあたりは施設の中からは見えません。だから訪問が要件になっています。
ただし、どの入所者でも算定できるわけではありません。前提が2つあります。
- 算定できる基本報酬の区分が決まっています(介護保健施設サービス費のイ(1)及びロ(1))。 まずは自施設がどの区分で請求しているかの確認からです
- 入所期間が1月を超えると見込まれる方であること
算定できない施設もあります
算定の流れ 訪問の時期を外さない5ステップ
実務の順番にすると、次の5つになります。
- 1入所の相談を受けた段階で、入所期間が1月を超える見込みかを確認する
- 2訪問日を決める。入所予定日前30日以内か、入所後7日以内に収める
- 3退所後に生活する居宅を訪問する
- 4退所を目的とした施設サービス計画を策定し、診療方針を決定する
- 5加算(Ⅱ)を算定するなら、生活機能の具体的な改善目標と、退所後の生活に係る支援計画まで作る
ここでつまずきやすい3つ
- 入所後の訪問は7日以内です。入所直後はどうしても慌ただしく、気づくと8日目ということが起こります
- 入所前の面談だけでは足りません。訪問したうえで、計画の策定と診療方針の決定まで行う必要があります
- 算定できるのは入所中1回だけです。(Ⅰ)と(Ⅱ)を両方算定することはできません
退所先が自宅ではないときは?
退所後に他の社会福祉施設等へ入所する場合も、本人の同意を得てその施設を訪問し、同じように計画の策定と診療方針の決定を行えば算定できます。 「自宅に帰らないから対象外」と早めに切ってしまわないほうがよさそうです。
(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは「目標と支援計画まで書いたか」
(Ⅰ)は、退所を目的とした施設サービス計画の策定と診療方針の決定まで。 (Ⅱ)では、そこに生活機能の具体的な改善目標と、退所後の生活に係る支援計画が加わります。
単位数は(Ⅱ)のほうが高く設定されています。 とはいえ、単位数のために書類を増やすという話ではないはずです。 訪問して見えた課題を目標の形に落とせるなら(Ⅱ)を選ぶ。この順番のほうが自然だと思います。
記録に残すこと 日付・訪問・計画の3点セット
記録は、次の3つがそろっているかで確認すると整理しやすくなります。
- 日付が言えること:入所予定日、実際の入所日、訪問日。この3つが並んでいれば、時期の要件はそのまま説明できます
- 訪問したことが分かること:居宅への訪問記録。社会福祉施設等を訪問した場合は、本人の同意を得た記録もあわせて残します
- 計画と方針が残っていること:退所を目的とした施設サービス計画と、診療方針の決定内容。(Ⅱ)なら改善目標と支援計画も
実地指導で見られやすいのは、やはり日付の整合です。 訪問日が要件の期間に収まっているか、入所中に2回算定していないか。 このあたりは自己点検のときに最初に見ておくと落ち着きます。
単位数や算定要件の原文、根拠になる告示へのリンクは老健・入所リハの報酬チェックにまとめました。この項目は、記録と自己点検のポイントまで全文を無料で公開しています。
おわりに
入所前後訪問指導加算は、書類のための加算というより「退所後の生活を先に見ておく」ための加算だと思っています。
訪問して分かることは、カンファレンスの資料よりずっと具体的です。 段差の高さ、玄関までの距離、家族がどこまで手を出せるか。 そこから逆算して計画を組めるのが、この加算のいちばんの値打ちだと感じます。
時期の要件だけは外さないように、入所の相談を受けた時点で訪問日を仮置きしておく。 それだけでも取りこぼしはかなり減るはずです。
関連する報酬チェック
単位数・算定要件・根拠資料はこちらで確認できます
この記事は、厚生労働省の告示・通知・疑義解釈をもとに、リハビリ専門職の自己点検用に整理したものです。 個別ケースの算定可否を判断するものではありません。 実際の請求にあたっては原本を確認し、判断に迷う場合は保険者・地方厚生局への確認を優先してください。 また、掲載内容は医療行為の代替となるものではありません。